リーグワンの試合運営ってどんなことをしているの?【前編】
Photo by 静岡ブルーレヴズ /谷本 結利(静岡ブルーレヴズ オフィシャルフォトグラファー)
初めまして、ベニューオペレーション(会場運営)を担当している
谷 俊一郎(たに しゅんいちろう)
と申します。リーグワン公式戦やトレーニングマッチ、各種イベントの運営・統括をしております。
これまでチケット担当・薄隅やREVS CREW(ボランティア)担当・佐藤が登場しているスタッフの「今之浦だより」ですが、今回は私が寄稿させて頂きます。
書いてみたらとても長くなってしまったので、<前編><後編>に分けて構成しました。今回は前編です。
▼後編はこちら
自己紹介
簡単に私谷俊一郎について僭越ながら紹介をさせていただきます。
スポーツビジネスの経歴としては、10年以上前にJリーグ・クラブで営業や広報を務めたのが最初で、直近ではラグビーワールドカップ(RWC)2019や東京2020の両世界大会に参画し、現在と同じくベニューオペレーションを担当していました。
東京2020終了のタイミングで、静岡ブルーレヴズからお声がけ頂き2021年9月末から参画しています。
ラグビーのプレー経験は小学生時の2年間のみで無いに等しいのですが、ラグビーが盛んな学校で学生生活を送ったためラグビーは常に身近な存在でした。大学ラグビー⇒トップリーグ⇒海外ラグビーと観戦範囲も広がり、ニュージーランドやイングランドにも観戦に行ってしまったラグビーファンです。
そんな自分にとってRWC2019での経験はラグビーに対する私の情熱をさらに深めるものでした。「ラグビー憲章でコア・バリューとして示されている『品位(Integrity)』『規律(Discipline)』『尊重(Respect)』『情熱(Passion)』『結束(Solidarity)』に象徴されるラグビーの素晴らしさ・面白さ・興奮・感動を多くの人に伝えていきたい」と思い、仕事をさせて頂いています。
ベニューオペレーション・公式戦運営の仕事内容
こちらは私を含め2人が主担当となっています。リーグワン公式戦を開催する為には、以下のような様々な領域を機能させる必要があり、(★)が付いている領域は主担当2人が直接リードし、他領域は各担当スタッフにリードしてもらい、運営全体を取りまとめています。
・運営統括(★)
・競技運営(★)
・場内演出(★)
・会場設営(★)
・スタジアム設備(★)
・備品(★)
・警備(★)
・医療サービス(★)
・会場アクセス(駐車場、バス、公共交通機関)(★)
・放送・中継対応(★)
・メディア対応
・チケット
・観客サービス(★)
・マッチデープログラム(★)
・CLUB REVS(ファンクラブ会員)
・各種イベント
・VIPホスピタリティ
・飲食売店(★)
・グッズ売店
・REVS CREW
・COVID-19対応(★)
ここからさらに、いくつかの領域について深く説明していきます。
運営統括
トップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロ時代にもヤマハスタジアム開催試合では各種イベント実施を行っていましたが、主体となって試合全体の運営を行うのは静岡ブルーレヴズとなった昨シーズンが初めて。新しく加わったメンバーには試合運営・イベント運営が未経験のメンバーも多く、私自身もヤマハスタジアムとアイスタでの運営経験は初めてで試行錯誤の中でのスタートでした。昨シーズンは12月のプレシーズンマッチや1月以降の公式戦を今から思えば「クラブ立上げから短期間でよく開催できたな」と思う反面、色々と至らない点も多かったかと思います。
現在もまだ2年目ですが当然経験も重ね、静岡ブルーレヴズとしての運営の「型」はスタジアム毎にある程度定まってきました。各試合のイベントや来場者数想定をふまえて「型」をベースに場内外のレイアウトやタイムスケジュールを調整し、毎試合後にご協力頂いている来場者アンケートにもくまなく目を通し、改善・修正できる箇所はすぐに手を入れ運営計画を立てています。社内でも運営に関するフィードバックを毎試合集め、チケット、地域連携、スポンサー、広報、グッズ、強化といった社内の他チームと常に連携しています。
場内演出
ラグビーの面白さ・興奮を観客の方に楽しんで頂くうえで、大型ビジョンや音響機器などを使用した場内演出は非常に重要な部分であり、最高のスタジアム空間を作るための演出を我々も日々熟慮しております。来場者アンケートを拝見しても、場内演出については良くも悪くもコメントが非常に多くなっていますので、現在の静岡ブルーレヴズの演出方針についていくつかポイントをご説明させて頂きます。
■全体の方針
現在の静岡ブルーレヴズはまだまだファンや試合への来場者数の層を拡大している状況です。そのため試合にはラグビー観戦が初めてだったりラグビーが良く分からない方が多く来場されますので、そのような方々に我々の試合を観戦後には「ラグビー面白いな」「ラグビーすごいな」「ラグビー楽しいな」「静岡ブルーレヴズ応援しよう」「またスタジアムに来たい」と思ってもらいたいと考えています。また、我々のホストゲームに来場した方には、ブルーレヴズを応援し選手を後押しして頂きたいと考えています。
その観点で、
ブルーレヴズを演出の中心に据え、スタジアム全体でブルーレヴズを応援する雰囲気を作る
ポイントとなるプレーや場面では、拍手や声援を送ってもらえるように分かりやすく誘導する
-試合展開が落ち着いてしまっている時も、その時の状況をふまえて演出要素を挿し込みスタジアムのテンションを上げる
という考えが、根底にあります。
■ホストチーム偏重
各クラブ・チームが事業性を持つというリーグワンの方針において、静岡ブルーレヴズというチーム・各選手が我々の価値の源となります。多くの方に静岡ブルーレヴズを好きになり身近に感じ応援して頂く、という事がクラブの根幹と考えています。
そのため繰り返しになりますが我々のホストゲームの場内演出ではブルーレヴズを中心に据えますし、スタジアム全体でブルーレヴズを応援し後押しするよう誘導します。この考え方は、チームによるプロスポーツとして成功を収めている欧州サッカーやアメリカ4大スポーツ、さらに日本プロ野球やJリーグと同じ、いわばスタンダードです。
スポーツ観戦の醍醐味は、やはり自らが応援するチームが最高のプレーをし勝利する事です。これはラグビーワールドカップでも先ごろのWBCでも多くの方が体感されていると思います。
ラグビーワールドカップやWBCでの興奮を、静岡の皆さんにより身近に味わって頂きたい。そのため、我々のホストゲームでは静岡ブルーレヴズを中心にした演出を継続し、スタジアム全体の一体感を生み出しブルーレヴズの勝利を後押しし続けます。もちろん、ビジターチームへのリスペクト(尊重)は欠かせないものですので、そのバランスは引き続き調整を続けます。
■応援誘導
2022-23シーズン開幕前に大きな時間を割いて検討したのが応援誘導のコンテンツです。誘導せずともそれ自体がエンターテイメントになり得る応援が自然発生するのがベストかもしれません。
しかし、クラブ立ち上げ2年目の静岡ブルーレヴズでは、応援文化も確立されておらず、ファン層もまだ十分でなく、ラグビー自体がまだ良く分からない観戦者も多くおられます。そのような状況では、応援ポイント、盛り上がれるポイントを明確に示し、来場頂いた方を誘導・インストラクションする事が必要な段階だと考えています。
スクラムに関して言えば、今シーズン使用したエンジン音・タコメーターのコンテンツが唯一無二でベストという事はないと思いますが、ヤマハ発動機ジュビロから静岡ブルーレヴズに受け継がれる”REVS STYLE”, ”5 Hearts”において、スクラムというプレーがいかに重要であるかをより多くの方に認識して頂き、そしてファンの方の応援の熱量を選手に伝えるという点で、あのようなコンテンツが必要でした。ヤマハスタジアムでのシーズン最終戦、スクラムの際のスタンドからのノイズのボリュームが試合が進みにつれて大きくなり、後半には勝負所のスクラムであえてコンテンツを使用せず皆さんの自然発生の応援・エネルギーに全てお任せさせて頂きました。
声出し応援が解禁になった後は、声出し誘導のコンテンツも準備し(「SHI・ZU・O・KA」や「GO!GO! REVS!」などの一部コンテンツは、実は社長の山谷が映像制作しています)、アンケートを参考にしながら試合毎にフレーズ、スピード、ビジュアルをアップデート・調整しました。こちらも、今シーズン最終戦では、本当に多くの方に声を出して頂く事ができました。他にも、ラインアウト時の「CLAP」や、トランペット・コール、支援いただいている自治体マスコットを利用したコンテンツなど、様々なコンテンツ・異色なコンテンツも使用してきました。
今後も、未だラグビーが良く分からない来場者の方や、その中にも含まれるお子さんにもラグビー観戦・静岡ブルーレヴズへの応援を楽しんで頂ける事を主眼に、来シーズンに向けて引き続き準備をして参ります。
■プレー説明
ラグビーのルールに馴染みのない来場者の方がやはり多い状況ですので、試合中の説明は端的で分かりやすい内容になるよう努めました。ただ、細かい点を全て理解いただくよりは、ルールは分からなくてもラグビーが面白い、楽しいと感じて頂きたいので、試合中もプレー説明より上記の応援誘導を優先させていました。
来シーズンへの取り組みとして、ルールよりも目の前で起こったプレーの意味合いや試合の流れをMCでもっと伝えていければと考えています。こちらはアドリブの要素が強くなりますので、スタジアムMCさんと今後会話を重ねていきたいと考えています。
静岡ブルーレヴズのラグビー解説コンテンツ「ラグビーふむふむ」も私が担当させて頂きました。シーズン中は、あまりコンテンツの追加ができませんでしたが、RWC2023が開幕する9月に向けてコンテンツ増強していきます。
こちらも、上記の方針と連動していて、細かいルールを伝えるよりも「ラグビーを面白く観戦するために、どんな知識が必要だろう?」というコンセプトで、他のラグビー・ルール解説コンテンツと一線を画していきたいと考えております。ご期待ください!
■レフリー音声
中継・配信映像では出力されているレフリー音声は、場内放送の要望を多く頂いています。確かに場内放送により判定が分かりやすくなりスタジアムでの観戦の面白さが格段に増すと私も感じていますが、現在はリーグ全体の方針として場内放送が許可されていない状況です。今シーズン終盤にはTMO時の確認対象コール(例.「オンフィールドディシジョンは、トライ(またはノートライ)です。その前に〇〇を確認します。」)のみ放送可能となり、実際に放送し好評でした。リーグには場内放送できる音声範囲拡大を引き続き要望していきますし、今シーズンのリーグワンプレーオフではライブ音声配信サービスでレフリー音声が出力されましたので、今後の放送範囲拡大の可能性も有ると感じています。
(↑少し聞きづらいですが、この場内ラジオ「レヴラジ」の裏で流れているレフリー音声が、放送可能になった確認対象コールです)
それでは、前編はここまで!最後までお読みいただきありがとうございます。後編もぜひお楽しみに。
▼後編も公開しております!
<了>