Revs Styleを貫き掴んだ2連勝!~大友信彦観戦記 2/5 リーグワン2022-23 Div.1 R07 vs 花園近鉄ライナーズ戦 ~
Text by 大友 信彦(静岡ブルーレヴズ オフィシャルライター)
Photo by 静岡ブルーレヴズ / 谷本 結利(静岡ブルーレヴズ オフィシャルフォトグラファー)
夜が明けたら陽は一気に昇る。雪解けが始まると春は駆け足でやってくる。
前節、待望の今季初勝利をあげたブルーレヴズが第7節の2月5日、花園近鉄ライナーズを34-14で破り今季2勝目をあげた。
堀川隆延HCはこの試合に向け、先発のラインアップに前節の東葛戦と全く同じ15人を並べた。前節の勝利を確かな自信としてチームに刻み込もう、自分たちが積み重ねてきた努力は正しかった、このまま前進していこうという強いメッセージが伝わってきた。
とはいえ、相手の花園近鉄ライナーズも、この試合には特別な気持ちで臨んできた。今季D1に昇格してきたものの、開幕戦で東葛に2点差で競り負けて以降は大敗を重ね、前節まで6連敗。念願の初勝利をあげる相手として、なかなか勝ち星に恵まれないブルーレヴズは格好のターゲットに見えたはず。そして会場は、国内で最も熱く、リーグワンで最もホームアドバンテージが強いと言われる花園ラグビー場だ。ピッチの中も外も一体になって襲ってくる。少しでも隙を見せたら喉元に食いつかれてしまう。
今季初めて、赤のセカンドジャージーを着用したレヴズのフィフティーンがピッチへ飛び出す。前節のグリーンロケッツ戦でブレイクしたルーキーFB山口が、WTBでスターターに戻ってきた奥村共同主将が、ピッチに飛び出すや宙高く跳び上がる。その躍動感が頼もしい。
試合はブルーレヴズのキックオフで始まった。ライナーズの蹴り返したキックを、レヴズはWTBツイタマが出足よくジャンピングキャッチ。ゲームのボルテージが一気に上がる。
この日も、レヴズの最大の強みであるセットプレー、特にラインアウトの安定感は不変だった。4分、自陣ゴール前に攻め込まれた相手ボールラインアウトをNo8クワッガ・スミス主将がステールしてピンチを脱出。直後にはハーフウェーで得たラインアウトを、リーグ全体で2位のラインアウト獲得数を誇る大戸裕矢がクリーンキャッチしてアタック開始。そして9分だ。PKで攻め込んだ左ゴール前ラインアウトを得ると、ここでもHO日野剛志-LO大戸裕矢のホットラインが絶妙なムーヴで相手のマークを外してクリーンキャッチ。得意のモールに持ち込もうとするが、ここはライナーズのプレッシャーでうまく組めない。だがレフリーはライナーズがモールを崩したと判断、アドバンテージを得たレヴズはここで大きくオープン展開にチャレンジ。SHブリン・ホールからCTBヴィリアミ・タヒトゥア、SO清原祥がパスをつなぎ、FB山口楓斗がブレイク。相手FBを引きつけてフリーになったWTB奥村にパスを送り、奥村が無人のインゴールへ飛び込む。SO清原のコンバージョンは外れるが、レヴズが5点を先制した。
しかし、初勝利へ燃えるライナーズは先制されてもひるまない。鋭い出足でレヴズにプレッシャーをかける。11分、レヴズWTBツイタマのキックをライナーズのスコットランド代表LOトゥーリスが201cmの長身を活かしてチャージしてそのままトライ。サンウルブズでも活躍したマシレワがコンバージョンを蹴った瞬間、それまでじっと声を潜めていた花園のファンが「入れえーーー!」と叫び声をあげる。その声に押されるようにボールはクロスバーを超える。ライナーズが逆転。花園のスタンドが沸く。ビジターゲームの難しさと面白さを同時に味わう瞬間だ。
手応えをつかんだライナーズは次のキックオフからもレヴズ陣に攻め込む。しかしクワッガ・スミス主将率いるレヴズのディフェンスは崩れない。ライナーズのキックを捕った山口にライナーズがハイタックル。しかしPKを得たレヴズもSO清原祥のキックがタッチに出ない、外のスペースへのパスがワンバウンドあるいはスローフォワードになるなど好機にミスが出てスコアには至らず。互いに我慢の時間が続く。
それでもレヴズは安定感を失わなかった。それを支えていたのはやはりラインアウトをはじめとするFWの踏ん張りだ。27分、相手ゴール前で得たPKからゴール前のラインアウトに持ち込むと、大戸をダミーにして5番桑野詠真がキャッチ。そのままモールを組んで一気に押し込みHO日野剛志が右隅へトライ。清原のコンバージョンは外れたが、レヴズは10―7と逆転する。
この試合の前半、レヴズはラインアウトを9回すべて獲得し、相手ボールを3回スチール成功。地域獲得で77%、ボール支配率で60%と優勢に試合を進めながら、ミスが散発し、思うように得点できない歯がゆい展開だったが、レヴズにはFWの精度の高いラインアウト、そして相手に渡ったボールをすぐに奪い返す「超人」クワッガ・スミスがいる(前半の40分間で4度もジャッカル成功したのだ!)。前半終了直前、ライナーズはPKからレヴズのゴール前に攻め込むが、フェイズを重ねてもレヴズのディフェンスは崩れなかった。結局、レヴズの面で前に出るタックルが相手の落球を誘い、PKを得て蹴り出しハーフタイム。レヴズは前半を10-7で終えた。
サイドを入れ替えた後半も接戦は続いた。
48分、レヴズは相手陣に攻め込み、右ゴール前のラインアウトを大戸が(またも!)獲得すると、モールにはせずボールをワイドに動かしてフェイズを重ね、左隅ツイタマのブレイクから12次攻撃でCTB小林広人がポスト下にトライ。清原がこの試合初めてコンバージョンを決めて17-7とする。しかし直後の51分、ライナーズはハイパントを競り合ったこぼれ球を拾ったWTBノーラがトライ。花園のスタンドが沸く。ライナーズが息を吹き返しかねない……。
だがレヴズには頼もしいインパクトメンバーが揃っている。
55分、LO桑野に代えてアニセ・サムエラ、FL杉原に代えてマリー・ダグラスという198㎝ペアを、SHブリンに代えてチーム最年長37歳の矢富勇毅という3人を一気に投入。そのファーストプレーだった。右のラインアウトを入ったばかりのアニセが確保すると、すぐにSH矢富がボールを持ってCTBタヒトゥアとクロス。抜群のコミュニケーション力で重厚にゲームを統率するブリンから、一瞬の加速でスペースを作り出す矢富へのリレーはゲームのリズムを変えた。タヒトゥアのラックから矢富が素早く出したボールはHO日野-CTB小林-FB山口と渡り、相手DFを引きつけて左隅で待つツイタマへ絶妙のパスを通す。ツイタマはタッチライン際を40m走り抜け、2人目ノーラのタックルを受けながら腕を伸ばす。ギリギリの攻防。TMOの末、地面に置いたボールをそのまま腕で押さえつけたまま前に押し込んでいたと確認され、トライを認められた。22-14とレヴズが8点差にリードを広げる。
そしてレヴズはエンジンの回転をあげた。大戸が連続タックルで相手の攻撃を寸断する。キックパスで自陣ゴール前に攻め込んだ相手WTBを、FB山口楓斗が猛タックル(前節のトライセーブのデジャビュ!)、反応したタヒトゥアがボールを奪う。66分、右ゴール前ラインアウトを最後尾のクワッガ・スミスが捕り、モールで圧力をかけておいてオープンへ。CTBタヒトゥアが相手DFをひきつけて外へ放すと、走り込んだCTB小林がスピンしながら相手をかわし、ゴールポスト真下に転がり込んだ。清原のコンバージョンも成功。29-14。
70分にはハイパントのチェイスに37歳矢富が激走してマシレワの足下を刈り、大戸が腰に食らいつくタックルで倒す。相手がハイパントを蹴り返せば、奥村が相手2人と空中で身体をぶつけあいながら勇敢にキャッチ。そしてタヒトゥアがフィフィタのタックルを突き抜け、ツイタマがマシレワのタックルをすり抜けて……ライナーズBKの看板プレーヤーの圧力を耐え、跳ね返し、倒れ込みながら左手を伸ばしてインゴール左隅にボールをたたきつけた。清原のコンバージョンは外れたが34-14。トライ数6-2。
そして残る10分弱も、レヴズは熱く、激しく、同時に規律を保った戦いを続けた。相手キックオフをFB山口が高く跳んで確保する。交代で入ったばかりのPR岡本慎太郎と郭玟慶が相手SO吉本にダブルタックルを見舞う。マシレワの足下にジョーンズリチャード剛が突き刺さる。77分、相手ゴール前に攻め込んだ場面でボールを失っても、抜け出した相手WTBノーラにツイタマが後方から追いついて腕をはたきノックオンさせる。そして80分、自陣ゴール前まで攻め込まれながら、相手フィフィタに入ったばかりのCTB鹿尾貫太が突き刺さり、ツイタマがジャッカルに入ってノットリリースを勝ち取るのだ。タイムアップを告げるホーンと同時に、手束レフリーのペナルティーの笛が響いた。矢富がゴール裏にボールを蹴り出し、試合は終わった。
ブルーレヴズ、34-14の勝利。そして2連勝。
実はブルーレヴズにとって、これはリーグワンで初めて、つまりブルーレヴズとして初めての2連勝。昨季は一度も連勝できなかった。トップリーグ時代に遡っても、ラストイヤーだった2021年は連勝なし。コロナで打ち切りとなった2020年の4連勝のあと、長く忘れていた喜びだった。
勝利がチームに喜びをもたらし、喜びがチームをより強く結束させ、より強さを加速させる。
「まず、今日は我々が最低の目標としていた、勝点5を取って勝つことをクリアできた。次への成長につながる」
そう口を開いた堀川隆延HCは「ペナルティーを前回より減らすことが出来たし、チームとして成長している部分がある」と続けた。
共同主将のクワッガ・スミスは「リーグワンではハーフタイムまでは僅差の試合が多い。今日の我々もその流れだったけれど、後半は少しずつあげて行けた。セットプレーは私たちのチームのプライド。そこをしっかり実行して、相手にプレッシャーをかけ続けて、ゲームを作ることができた」と胸を張った。
2週続けての、ボーナスポイントあり勝点5での勝利。7戦を終えて、勝点を14に伸ばし、昨季の最高順位と並ぶ8位に浮上した。次週はBYE。1週の休みをはさみ、2月19日、神戸ユニバーでのコベルコ神戸スティーラーズ戦に臨む。
ブルーレヴズ。もう、ここからは上がるだけだ。<了>
大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。