2023-24シーズン新規加入選手はどんな選手たちなのか!?
Text by 大友信彦(静岡ブルーレヴズオフィシャルライター)
Photo by 静岡ブルーレヴズ /谷本 結利(静岡ブルーレヴズ オフィシャルフォトグラファー)
3月28日、静岡ブルーレヴズ2024新規加入選手の入団会見が行われた。
新規加入選手といえば、昨年の今ごろ(よりも少し前)には、アーリーエントリーで入団したばかりのSO家村健太、WTB槇瑛人、両選手の活躍がレヴニスタの胸を躍らせていた。その1年前には、4月に加入したばかりのジョーンズリチャード剛がさっそくリーグワンデビューを飾っていた。ブルーレヴズが「若手が活躍するチーム」と評される所以だろう。
冒頭、山谷拓志社長は「8名の新加入選手を迎えられることを嬉しく思います。昨年はアーリーエントリーで家村選手、槇選手が活躍、今季もすでにトゥポウ選手、ヴェーテー選手、作田選手がデビューしていて頼もしい」と挨拶。藤井雄一郎監督も「すでにリーグワンで試合に出て活躍している選手もいる。みんな元気に練習しているし、1日も早くブルーレヴズの戦力として、試合で暴れてくれることを期待しています」と期待を込めて話した。
以下に、新加入選手のプロフィールとコメント要旨を紹介する。
ショーン・ヴェーテー
環太平洋大学・プロップ・190cm・132kg
ニュージーランドのウエストレークボーイズ高から、元日本代表で明大、神戸製鋼で主将を務めた小村淳監督が率いる岡山県にあるIPU環太平洋大学へ留学。1学年上のNO8ティアナン・コストリー(現コベルコ神戸スティーラーズ)とともに2022年度の大学選手権初出場の原動力となった。
最大の武器は、ヴェーテー自身が「僕のストロングポイントです」と話す大きな身体だ。公称のボディサイズは「190cm132kg」だが、下半身(特に太腿!)の太さ、上腕から胸板にかけての分厚さは圧巻。お相撲さんのような巨体で、お相撲さんにはなかなかなさそうなスピードで走る。
3月16日のリーグワン第10節・ブラックラムズ戦でリザーブ入りすると後半34分からピッチに入りリーグワンデビューを飾ると、翌週の第11節、トヨタヴェルブリッツ戦では先発右PRに大抜擢。前半40分のみの出場ながら、日本代表キャップ9を持つヴェルブリッツの三浦昌悟選手をトイメンに互角のスクラムを組み、2連勝に貢献した。
目標とする選手像は? の問いには「スクラムではブルーレヴズの伊藤平一郎さん。あと、神戸の具智元選手のように走り回れる選手になりたい。今シーズンのゴールは試合に出て活躍すること。もっと試合に出たい」
デビュー戦となったブラックラムズ戦については「メンバー入りが決まった週の初めからずっとワクワクして試合に臨みました。チームが勝てたことは良かったし、自分のパフォーマンスについては満足していますが、もっともっと成長したい。リーグワンはゲームのテンポがすごく速いので、速く動かなくちゃいけない。大学との一番の違いはそこだと思うので、練習後のエキストラワークでトレーニングを重ねています」と意欲も十分だ。
中山律希(なかやま・りつき)
明治大学・プロップ・169㎝・108kg
同じくPRとして加入したのが、明大出身の中山律希。天理高時代は3番の右PRで、高2でU17日本代表、高3で高校日本代表に選ばれた(海外遠征はコロナ禍により中止された)。明大では左PRに転向。1年時の帝京大戦で対抗戦デビューし、39-23の勝利に貢献。天理高時代からトライを量産する走れるPRとして知られ、明大4年時は主にインパクトプレーヤーとしてリザーブから出場したが、対抗戦の成蹊大戦では短い出場時間ながら豪快なトライをあげた。
28日の会見では「自分のストロングポイントはタックルと激しいコンタクト。ブルーレヴズはスクラムが看板のチームなので、しっかりチームにコミットして、ブルーレヴズらしいプロップになりたい」と堂々と宣言。
静岡の印象を問われると「この間、初めてハンバーグの『さわやか』へ行って、あんなに肉汁の多いハンバーグは初めて食べました。感動しました!」と興奮気味(?)に報告。静岡でしか食べられないのが『さわやか』のハンバーグ。何度も食べたい選手は中山選手を追ってブルーレヴズへ来たれ!?
作田駿介(さくた・しゅんすけ)
流通経済大学・フッカー/プロップ・175cm・104kg
第8節の埼玉ワイルドナイツ戦で後半19分から途中出場、アーリーエントリーでリーグワンデビューを飾ったのが流経大から加入した作田駿介。背番号1の左プロップと背番号2のフッカー、両方をこなすユーティリティーフロントローだ。
「僕の強みはボールキャリーやタックル。ファンのみなさんには、身体をぶつけるところを注目して見ていただきたいです」
流経大柏高2年ではフッカーで全国高校大会4強(ロックでお尻を押していたのが1年先輩の八木澤裕翔だ!)、高3では左プロップで全国大会8強。流経大では1年からリーグ戦出場。2年時は左プロップで、3年ではフッカーでレギュラーを張り、4年時はリーグ戦全試合に先発し、チーム最多の8トライをあげた。
目標とする選手は?の問いには「日野選手です」と即答。
「ベテランで、80分近くフルでフィールドを走っている姿がカッコイイ。日野選手のように、チームの勝利に貢献して支えられるよう頑張る」と宣言した。
静岡についての感想は「大学のあった茨城県も自然が多くて落ち着ける環境だったのですが、静岡も緑が多くてリラックスできる。安心感がありますね」
北村瞬太郎(きたむら・しゅんたろう)
立命館大学・スクラムハーフ・168cm・70kg
「強気なプレーと力強いランを見て欲しいです!」と、力強い言葉で言い切ったのがスクラムハーフ(SH)北村瞬太郎だ。そのキャリアは「無事是名馬」と呼びたくなる。横浜RS出身だが国学院栃木高に進み、高校時代は3年連続で花園の全国大会メンバー入りし、3年間の花園全試合に出場。立命館大に進んでも1年の関西リーグ初戦・京産大戦に先発SHとして出場するとトライデビュー(主将は現ブルーレヴズの庄司拓馬選手だった!)。2戦目はリザーブに回ったが以後は4年のシーズンの最終戦まで全試合に背番号9を着て先発出場。それだけに、抱負を問われると「まず静岡ブルーレヴズの9番のジャージーを着て活躍して、最終的には日本代表のサクラのジャージーを着て活躍したい」と言い切った。
大学3年時の開幕戦、同志社大戦では逆転決勝トライをあげ、プレイヤーオブザマッチを受賞。大学4年時は7試合で5トライをあげ、関西リーグ7位タイ、SHとしては天理大→三重ヒートの北條拓郎と並び最多だった。「トライを取れるSH」としての活躍が待ち遠しい!
加藤大冴(かとう・たいが)
Westlake Boys High School=NZ・スクラムハーフ・170cm・70kg
神奈川県出身で9歳の時家族でNZに移住。ラグビーはNZで始め、2023年にU18ノースハーバーそしてU18ブルーズに選出された経歴を持つ。
「僕のストロングポイントはテンポのいいラグビーをすることと、スタミナを生かして走り続けること。ディフェンス面でもタックルが得意なので、そこを見ていただけると嬉しいです。抱負は、一日も早く背番号9を背負ってグラウンドに立って、静岡ブルーレヴズで優勝したい。個人的にはU20の日本代表にも選ばれたら嬉しいです」
NZ育ちの逆輸入選手といえば、サニックス-サントリーそして2015年ワールドカップ日本代表で活躍した小野晃征さん(東京サントリーサンゴリアスアシスタントコーチ)、三洋電機/パナソニックで活躍した田邉淳さん(クボタスピアーズ船橋東京ベイアシスタントコーチ)が思い浮かぶ。共通しているのは、サイズやフィジカルで優る相手にもアタックでもディフェンスでも向かって行く姿勢と周囲の選手を生かすコミュニケーション力。育ったオークランド地区はNZでもアイランダーが多く個人技に優れた選手が多いだけに、レヴズBKのキーマンであるチャールズ・ピウタウ、ヴィリアミ・タヒトゥアらの力を引き出すコミュ力に期待がかかる。
「リーグワンの試合はNZでも日本のテレビを見られるアプリを入れて、ほとんどの試合を見ていて、テンポが早いなという印象を持っていました。NZ時代のチームメイトはクルセイダーズとかのアカデミーに行ったりしてるのですが、僕がブルーレヴズと契約してこっちへ来ると決まったときは、みんな『すごいなー』『がんばれ』と言ってくれて嬉しかった」
ブルーレヴズでの活躍がU20、そしてシニアでの世界への扉を開く!
杉本海斗(すぎもと・かいと)
東洋大学・ウイング・172cm・76kg
2022年度の関東大学ラグビーリーグ戦1部に昇格すると初戦でいきなり前年王者の東海大を破り旋風を巻き起こした東洋大。主将を務めた齋藤良明慈縁とともに躍進の主役となったのがトライゲッター兼ゴールキッカーのウイング杉本海斗だった。大学選手権初出場を決めたリーグ戦最終戦の立正大戦では4本のゴールキックを決め(3C1P)プレーヤーオブザマッチに輝いた。
「自分の強みはスピードあるラン。これからいっぱい走ってトライするのを見てもらえたらうれしい。試合に出て、チームの勝利に貢献できるようにしたい」
東京・世田谷の千歳中でラグビーを始め、東京高に進み3年で花園出場。3回戦で東海大仰星に5-17で敗れたが東京唯一のトライをあげた。関東大学リーグ戦2部の東洋大に進み、大学2年のシーズンに2部2位から入替戦に勝利し1部昇格。この試合逆転決勝トライを含む2トライ。1部に昇格1年目となる3年時はキックも含めリーグ4位となる53得点、4年のシーズンは97点でリーグ3位、9トライはリーグ2位とトライ&得点を量産した。
静岡で気に入っていることは?の質問には「サウナです」と即答。
静岡に来てすぐ先輩に有名なサウナ施設「しきじ」に連れて行ってもらってからすっかりハマり「毎日サウナへ行っています」
デビューの準備はととのったかな?
岡﨑颯馬(おかざき・そうま)
早稲田大学・センター・177cm・84kg
今季CTB/SOからSHに転向して大ブレイク中の岡﨑航大は実兄だ。兄の元ポジションのセンター、経歴も長崎RS-長崎北陽台と同じ道を歩んだ後、筑波大に進んだ兄とは別れ早稲田大学に進学したが、リーグワンに進むに際しては兄と同じ静岡ブルーレヴズを選んだ。
「静岡ブルーレヴズにはファミリーのような雰囲気があって、このようなチームで切磋琢磨していけば、自分が成長できると思いました。兄とは3歳違いで、高校では入れ違いで、一緒に試合に出ることはできなかったけど、今度は自分が試合に出られるように頑張れば兄と一緒に出られると思う。ブルーレヴズでは矢富さんも兄弟で出場しているし、先輩方に負けないように頑張りたい」
長崎北陽台高2年時はプロップ中山律希とともにU17日本代表を経験。高3では主将を務め、早大では2年からセンターのレギュラーポジションを獲得し、早大BKの仕掛け役を担った。
「僕の強みはアタックの仕掛けやパス、80分間ひたむきにプレーし続けるところ。センターは外国人選手が多いポジションですが、自分の強みを出して、早く試合に出てブルーレヴズの優勝に貢献したい。静岡にはヤマハ発動機の時代から早稲田大学の偉大な先輩がたくさんいるので、その先輩方を超えられるように努力したい」
ヴェティ・トゥポウ
摂南大・ロック・190cm・115kg
フィジーのレリーン・メモリアルスクールから2020年に摂南大に留学。1年のシーズンはコロナ禍で変則開催となったが4試合すべてに出場。3年の立命館大戦では1人で4トライをあげる大暴れでプレイヤーオブザマッチを受賞した(相手チームのSHは今春ともにブルーレヴズ入りした北村瞬太郎だった!)。4年のシーズンはロックとしてリーグ戦6試合に出場して3トライ。7位で臨んだ入替戦では自らトライもあげて龍谷大に圧勝・残留の原動力となった。
ブルーレヴズに入ると第7節の相模原ダイナボアーズ戦でリザーブ入りし、後半32分からダグラスに代わってピッチへ。アーリーエントリーの中で一番乗りでリーグワンデビューを果たし、試合の最後にはタックルを受けながらもトライ。驚異の身体能力を見せた。
記者会見はコンディション不良で欠席となったが、すでに2試合のリーグ戦に出場し存在感を放つ。フランカーポジションは激戦だが、どこまで食らいつきメンバーをつかみ取っていくかが楽しみだ。
大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。